哀悼 西城秀樹さん 普通の暮らしの素晴らしさをいとおしんだヤングマン
一人の歌手が逝ってしまった。
そのニュースで日本中が悲しみに包まれるのは多分、芸能界でそう何人もいないのではないでしょうか。
美空ひばりさん、石原裕次郎さん、尾崎豊さん・・・
それぞれが多くの人に愛され、その歌を自分の人生に重ね合わせてきました。
先日急逝された西城秀樹さんもその一人なのだと、
亡くなって初めて気がついた人が大半だったのではと思います。
二度の脳梗塞を患い、懸命にリハビリをされて、麻痺の残る身体でステージに立ち続けた。
「自分からマイクを取ったら何もない。歌やステージは自分の人生そのもの」
そう言って、最後まで「西城秀樹」であり続けました。
1972年にデビュー。
長身、甘いマスク(今で言うイケメン)、抜群の運動神経でカッコよく、
当時の女子(主に今の50代以上)の心をわしづかみにした「ヒデキ」は、
広島市出身で、10代前半から兄達とバンドを組み、
喫茶店で演奏しているところをたまたまスカウトされ、
家出同然で上京したというエピソードも、なんとも昭和の時代を感じさせます。
歌手になることに猛反対していた親に連れ戻されそうになった時、
両親を説得してくれたのはお姉さんだったそうです。
一緒にバンド活動をしていたお兄さんや、後押ししてくれたお姉さんの存在がなかったら、
「西城秀樹」はこの世に存在していなかったのですね。
力強い歌唱力とアクション、当時の流行りだったロングヘアー。
昭和を代表するスター歌手でありアイドルでした。
学校ではヒデキに憧れて、スタンドマイクに見立てて竹ボウキを振り回すやんちゃな男子もいました。
出演したカレーのCMがきっかけで幅広い年齢層に支持され、
「ヒデキ、感激!」で、一躍お茶の間の人気者に。
「り~んご~とハッチミツ とろ~り とっけてる~」
今でもカレーのルーを選ぶ時、
「バーモントカレー」を見ると自然にヒデキの歌声が頭の中で流れるから不思議。
まさに、カレーを国民食にしたヒデキ。
国民的ホームドラマだった「寺内貫太郎一家」やNHKの朝ドラ「つばさ」などにも出演し、
芸域を広げていきました。
歌謡曲全盛期、人気の歌番組「ザ・ベストテン」の常連で、数々の名曲で常に上位争い。
「激しい恋」「傷だらけのローラ」「ギャランドゥ」「ブルースカイブルー」「ブーメランストリート」・・・
アニメ「ちびまる子ちゃん」のテーマソングも歌いました。
そしてヒデキの代名詞といえば「ヤングマン」。
誰もが知っているYMCA、明るいアップテンポの曲で、
ワ~イエムシイエイと身体で文字を作って踊り、日本中を元気ハツラツにしてくれました。
平成でいうと「恋するフォーチュンクッキー」のダンスをみんなで踊るような、そんな感じでしょうか。
「ユーウツなど 吹き飛ばして 君も 元気出せよ」
ベタな歌詞だけれど、ヒデキが歌うと本当に元気が湧いてくるような気がしたものです。
熱烈なファンだったかといえば、決してそうではない。
そうではないけど、ヒデキの歌を口ずさみ、
YMCAを学校のみんなと踊って楽しかった覚えがあります。
「ヤングマン」も好きでしたが、一番印象に残っているのは「炎」という曲。
「一生一度なら ピエロも主役さ~」
迫力の歌唱力に、「本当にこの人は歌うことが好きなんだな~」と10代女子なりに思ったものです。
誰のインタビュー記事を読んでも、
「スターらしくない、気さくで快活、やさしい人」だったそうで、誰からも愛されたヒデキ。
還暦を祝うイベントで「ヒデキ、還暦!」と自分をいじるお茶目さも、
広く愛された理由でしょうか。
西城秀樹を知る人にとっては一人のスターでも、
ひとつ屋根の下に暮らしたご家族にとってはかけがえのない伴侶であり、そして父でもあった。
初めてのお子さんが誕生した時、
「こんな幸せな出来事が自分に訪れるとは思っていなかった」
とおっしゃっていたそうです。
日本レコード大賞など、数々の賞を受賞してきた実績さえも、
「そんなことよりずっと嬉しいんだ」と。
病気を患って気づいた、普通の暮らしの素晴らしさ。
水が冷たくて気持ちいいとか、食べるものがおいしいと思えることが嬉しい。
「そんなふうに感じることができたのは、家族のおかげです」
そのご家族を遺しての早過ぎる旅立ちは、どんなにご無念だったことか。
お子さん方はこれから成人し、社会に出て、結婚や出産などの人生を歩んで行く。
もっと一緒にいて、一緒に過ごして、たくさんたくさん思い出を作りたかったでしょう。
ご自宅の棺には、お子さんたちが選んだ赤のシャツとパンツに身を包んだヒデキが眠っているそうです。
永遠の眠りについたヤングマン。
その歌声は、永遠に人々の心に刻まれます。
西城秀樹さんのご冥福を心よりお祈りいたします。
■ひとつ屋根の下に家族と泊まる。子供達や孫達と、かけがえのない思い出を。
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